160 学術書

2011年10月15日 (土)

【書評】あたらしい哲学入門―なぜ人間は八本足か? 著者:土屋 賢二

あたらしい哲学入門―なぜ人間は八本足か? 読了◎。帯の煽り文句は「才色兼備な女子大生を熱狂させた伝説の哲学入門講義がここに復活!」。おなじみ土屋教授の、御茶ノ水女子大での講義「哲学」を元にした哲学の入門書。哲学の問題は、いくら考えても解決できない、わけではない。実は明快な解決がある。哲学の問題を実際に解いてみせることで、哲学について丁寧に解説してゆく。

土屋教授の、ユーモアエッセイでない本を読むのは初めてかもしれない。真面目な哲学入門書も書くのか、と軽く驚く。しかも書いてあるネタはいつものユーモアエッセイと全くおんなじで、再び驚く。しかし真面目な哲学入門書である本書の方が、ユーモアエッセイよりも数倍面白い。どういうわけだ。三たび驚く。

いやー面白い面白い。勉強の息抜きに軽い気持ちで読み始めて、やめらんなくなって一気読み。(って最近コレばっかやな。抜きまくりやんけ!)やっぱ「溜まってる」ってことですかねえ。うんでも思うんだけど、一日一冊を目標に一生懸命読書してブログに書いて、ってやってた頃より、純粋に読書を読書として楽しめてる感じがする。お勉強があるんで読みたいけど読めない読みたいけど読めないああー駄目駄目駄目駄目読んじゃった、ってのが読書の快感を高めてくれている気が。これを称して読書M、略してドMと呼・・・ばないな。単に逃避してるんじゃないかって?いやちゃんとお勉強もやってますって。ホントホント。ま、それはそれとして。

オレ昔からナンセンスギャグが好きでなあ。ルイス・キャロルとか、そういう系譜のギャグ、それと、座禅の公案(←いやそれ並べるのはどーよ?)。右手と左手鳴ったのはどっちか、なんてェ奴。もう小学校の頃から、そういう類のものが気になって気になって。そういうのに接すると、理由もなくなんだかワクワクするんだよ。今も。このワクワク感は、とてもとても根が深いなー。たぶん。オレのDNAの一行目(ってどんなDNAだよ!)に刻まれている気がする。昔々オレの母親が「おまえはナンセンスギャグにフェティッシュがあるみたいね」と言ったとか言わなかったとか(すみません。虐殺器官ネタです)。

真面目な話、試験に受かって好きなだけ本が読めるようになったら、取り敢えずウィトゲンシュタインのはしごをよじ登って逆立ち位はしてみたいものだと思う。いや結局は放り投げるんですけれども(すみません。これも一種のネタです)。

それと、この本とは直接関係がないけど、同じナンセンスが、一方ではナンセンスギャグになり、一方では様々な思考のモトとなり、一方では思考を止めるためのモトとなった、その扱われ方が面白いと思うんですよ。モンティ・パイソンとアリストテレスと白隠禅師。そーかそーか、一緒かあ。これで一冊書けないかな。

やりたいことリスト、読みたい本リストが増えてくのはなかなか楽しいね。(逃避の典型的な例です。自覚。はい。気をつけましょう。( ̄へ ̄|||) ウーム)

で、これのどこが書評やねんて?(すみません。マジで面白いんです。一読をお薦めします。)

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2010年12月31日 (金)

【書評】アメリカン・デモクラシーの逆説 著者:渡辺靖


アメリカン・デモクラシーの逆説読了◎。(政治学者でも社会学者でもなく)人類学者である著者が、アメリカという社会を25年に亘りフィールドワーク。この社会の中心軸である”デモクラシー”という機構の動作の模様(そして動作不良の模様)を観察・分析した記録。ってゆーとちょっと極端な紹介かな。しかしこの本の面白さの半分はその独特の(人類学者的)視線にあるんだから。うん。

目次はこんな感じ。詰まっているのは逆説と逆説と逆説だあ。例によって”・・・”以下はワシのコメント。生煮えなマトメでスマンな。取り敢えず殴り書き抜粋。

第1章 アメリカン・デモクラシーの光と影・・・カトリーナが暴いたものは何か?政治への不信と他者への恐怖。アメリカ的自由の行き着く先が、ソレであるという逆説。

第2章 政治不信の根源・・・個人献金、ロビイスト、超資本主義=新自由主義、政治的妥当性とイデオロギー=文化戦争。包摂されるジャーナリズム。権力を行使する側も権力を監視する側も超資本主義に包摂されてしまうという逆説。

第3章 セキュリティへのパラノイア・・・ゲーテッド・コミュニティ=新しい中世の増殖。自由の喪失。ヨーロッパで壁が壊れていく時代に、アメリカで壁が作られているという逆説。信仰の世界でのマーケティング手法の浸透=メガチャーチ。近代の象徴であるアメリカで保守派教会の存在感が増しているという逆説。メガチャーチは福祉に於いて新自由主義を補完するが、一方メガチャーチそのものが新自由主義的な論理と力学に従うという逆説。オーディット文化。新自由主義の下で、自らの精神性や身体性さえ自らの責任や判断によって統治・所有することが困難になっているという逆説。私的領域の植民地化。孤独な個人が権力に自ら隷属していく。

第4章 多様性の行き着く先・・・ボストンのバラモンの話。能動的社会関係の構築、服従から交渉へ。個人化・多様化する家族と「家族の価値」。新自由主義と家族の価値の共通項はセルフガバナンス。内包的な自己理解の努力と、対極にある原理主義の台頭。強制バス通学の話。分裂は多様性によるのでなく、原理主義の押し付けによる。市場主義が歪める多様性。農民の小作人化。市場に飼いならされることなく市場を飼いならすことは可能か。インディアン・カジノの例。

第5章 アメリカニズム再考・・・多文化主義が原理化する可能性について。アメリカ例外主義とアメリカニズム。ダブルスタンダード。帝国的動機。ソフトパワーを巡る逆説。タカ派による理想主義的振舞いを懸念してつくられた中立的な概念が、帝国的動機のカモフラージュであると看做された。「アメリカ史のアイロニー」byラインホルド・ニーバー(1952年)。反米主義の本場はアメリカであるという逆説。グローバル化とはアメリカを包摂化していくプロセス。<帝国>的と「帝国主義」的。そして自己修正力。つまりこれら逆説のみにアメリカンデモクラシーを回収することの逆説。

今年アメリカ関係の本は数冊読んだが、オレ、この辺の政治的或い社会的な問題を扱った本を読むには、基本的な素養が欠けているんだな、ってのを改めて自覚しました。この本は、その手の教科書的基礎知識をお勉強する、って意味でも、とても手頃で分かり易かった。例えば、こういう基礎知識。

・連邦政府は「自由への脅威」か、それとも「自由への手段」か。アメリカでは後者がリベラルと称される。ヨーロッパでは保守主義ー自由主義ー社会主義という三竦み。アメリカでは自由主義を前提とした保守主義と、自由主義を前提としたリベラリズムの対立。

・アメリカの保守大連合の中身。強いアメリカの復権を目指す安保保守(ネオコン、新保守主義)。小さな政府を目指す経済保守(新自由主義)。「伝統的価値」の回復を目指す経済保守(宗教右派)。従来からの穏健保守(オールド・リパブリカン)。

そしてそいういう教科書的な読み方だけでなく、読み物(というとちょっとアレですけど)としても、非常に面白い。なんて言うんでしょう、意表を衝かれる感じというか。異質な社会を旅するSF的な読み物を読む感覚で、怒りながら驚きながら感心しながら、読んでいました。事実は小説より奇なりっていうかさ。もちろんそんな読み方は著者の望むところではないだろな、ってのは分かってますけどね。なんにしろ、アメリカ社会の手触りの正体と、今、世界の置かれた状況がなんとなく見えてくる、ええ本です。一読をお奨めします。

さてと、んな訳で今年ももうすぐ終わりですな。最後の書評がこんな雑なメモ書き抜粋でなんだかちょっとアレなんだけど、ま、しょうがない。そのうちもうちょっと整理することもあるでしょう。それでは、みなさま良いお年をお迎えください。

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2010年11月27日 (土)

【書評】政治をするサル―チンパンジーの権力と性 著者:フランス・ドゥ・ヴァール

政治をするサル読了◎。副題は「チンパンジーの権力と性」。原題は”Chimpanzee Politics : Power and Sex among Apes"。オランダのアーネムにある広大な野外飼育施設では、自然に近い状態でチンパンジーのコロニーを観察することが出来る。一頭一頭の個体を識別し、誰と誰がどのように関わったか、紛争の際にどちらの側に味方したか、つぶさに記録することで、チンパンジーの「社会」の構造が見えてくる。ただ単に強ければトップに立てるわけではない。社会的な序列があり、序列の確認のための儀式があり、地位を巡っての紛争があり、紛争の後の和解がある。その興味深い、あまりに人間臭い、習性の数々を紹介する・・・。

なにやら面白かったですぅ。基本的なスタンスとしては学術書というよりは一般向けの啓蒙本なんだと思うが、著者が不器用なのか、全体的に、観察した事件をただ並べてあるという地味な仕上がり。ところがこれが逆に幸いして、俗に流れず、ヘンに煽らず、しみじみ興味深い、面白い本になっています。一読をお奨めします。

何が面白いのか。まずはその興味深い生態。一頭一頭には、はっきりとした個性があり、それぞれの戦略、やり方、手管、で、コロニーに於ける自らの地位の向上を画策し、或いは維持し、或いはライバルの追い落としを図る。そこには、同盟があり、日和見があり、裏切りがある。虚勢があり、面子があり、贔屓がある。あるように見える。とても興味深い。

それから西欧人の類人猿観の変遷、みたいな観点から。冒頭のデズモンド・モリスの序文に出てくるセリフ、「私たち人間は、落ちた天使よりもむしろ向上した類人猿に近い」。ってそれ、あたりまえでしょーが!?っていうツッコミはワシらには出来るけど、西欧人は結構マジで言ってるんだよな。人間と動物は違う、っていう、そういう前提に立っているからな。その辺の葛藤というか、歴史的な変遷が面白いよね。この辺、SSSMとか、遺伝と環境とか、その辺の議論とも絡んできます。

んでもって、もっと個人的な観点からも、とても面白く、ためになる本でしたぜ。どういうことかというと、例えば会社とかでね、自分の体面を保つためにいろいろとパフォーマンスする感じとか、あるでしょ?自分自身もそうだし、同僚とか上司とか見ててもそうじゃん?この本読んでからそれ見るとね、「あー、これ、チンパンジーと同じ同じ」って思うんですよ。「そーか、DNAに書き込まれてるか。じゃ、しゃーねーな」みたいな。で、それはなんだかホッとするんだよ。

この本、「飢えたピラニアと泳いでみた」の中で名著として紹介されててね、読んでみたわけですが。確かに評判どおりの、ええ本でした。一読をお奨めします。ウッキー!

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2010年9月 2日 (木)

【書評】条文を捉える 著者:久野浜男

条文を捉えるⅠ~Ⅳ読了◎。工業所有権四法の逐条解説本。青本の向こうを張って、独自のスタンスで条文に徹底的な解説を加える。独自のスタンスとは、即ち一般法(民法、民事訴訟法等)に対する特別法として見た場合の、工業所有権法の意義を明確にするということ。

ってわけで条文を捉えるⅠ~Ⅳ、やっと読了。Ⅰを読み始めたのが確か7月の10日頃でしたから、50日ほどで一回廻した計算になります。思ったより時間かかったな。

ええ本です。って今更ワシみたいのが書くのもなんなんですけど。

この本、弁理士受験界ではどの程度ポピュラーなんでしょうね?Ⅰの初版の発行が平成20年11月28日なんで、まだ2年経ってないわけですよね。新しいんで、合格体験記の類にもあまり出てこない。即ち、良いも悪いも、ネット上に評判が蓄積されていない状態だと見ました。初学者は評判を見て教科書・参考書を選定しますから、その意味でまだポピュラーになってないんではないか、と想像します。

ワシから見たら、これ、むちゃくちゃええ本です。少なくともワシのようなレベル(スタートして3ヶ月弱の初学者)にとっては、理想とも言える内容。青本を読むのが辛いアナタ。取り敢えずこっちを読んでみることをお奨めします。同じ逐条解説でも、こっちは読みやすい。深い。痒いトコに手が届く。

これは、立ってるスタンスの差、だよね。青本って、立法者自身の書いた解説ってことで、基本中の基本だとは思うけど、スタンスは受験者を向いてない。官僚として”経緯を記録しておく”っていう、その目的に向かって書かれているからな。先輩の批判も出来ないだろうし。可読性を上げる、なんて発想もない。読み辛いのは、まあ当たり前なんだよね。

その点、条文を捉えるⅠ~Ⅳは、徹底的に受験生の立場に立って書かれている。だからすげー読みやすい。記述で特徴的なのは、1.一般法(民法・民事訴訟法等)との対比、以外にも、2.可読性向上を意識する、3.関連する判例の紹介、4.列挙の徹底、5.例示、6.法律用語の説明(基礎の基礎から)、ってトコですか。

特に④列挙の徹底、は助かる。例えば「特9条:代理権の範囲」を例にとると、”・・・列記事項を書き下す。”として、以下の9類14項目が書き下してあります。
①特許出願の変更、特許出願の放棄、特許出願の取り下げ
②存続期間延長登録出願の取り下げ
③請求の取り下げ、申請の取り下げ、申し立ての取り下げ
④国内優先権の主張、国内優先権の取り下げ
⑤実用新案登録に基づく特許出願
⑥出願公開の請求
⑦拒絶査定不服審判の請求
⑧特許権の放棄
⑨復代理人の選任

そーか、この9類14項目なのか、って見通しが立つと大分気が楽になる。気が楽になると覚えよう、って気になるじゃないですか。ね?

それから例示に関して言うと、例えば「請求とは具体的に何か」ってのも例を示してくれるわけですわ。”「請求」には、期間延長の請求、期日変更の請求、判定の請求、裁定の請求、裁定取り消しの請求、審判の請求、訂正の請求、既納特許料返還の請求、出願審査手数料返還の請求、既納手数料返還の請求、がある。”てな感じにね。

ってわけで、この記事、もしかしたら言わずもがなな内容かもしれないけど、とにかく面白く読ませて戴きました、理解の役にも立ちました、ってことで、とてもとても感謝しながら書いてます。ありがとう。さてすぐ2廻し目に入るぞ。

因みにこの記事の冒頭、Ⅳへのリンクが欠けているのは、アマゾンにⅣが出てないせいです。売れちゃったのか?

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2010年7月10日 (土)

【書評】弁理士試験代々木塾式・判例セレクト知的財産法 著者:大塚康英、廣田浩一

弁理士試験代々木塾式・判例セレクト知的財産法読了○。近年の弁理士試験問題の傾向である判例重視の傾向に対応すべく、判例のポイント部分のみを抽出し、コンパクトにまとめた本。事件名、事案の概要、争点、結論、理由、アドヴァイス、が見開きに収まっている。アドヴァイスでは、他の判決との関係、学説の紹介の他、過去の弁理士試験出題情報等も記載してあります。

ってわけで、えーっと、もともとこのブログは書評ブログだったわけで(いや今でも書評ブログなわけで)、ルールは読んだら書く、ってことになっています。で、読んじゃったんで、書こうかな、と。つーても、ま、普通の所謂”読書”とは違うのは、あたりまえの話だけどね。なんというかこう、一種の習慣というか中毒というか、一定のペースで書評をアップしていかないとなんだか落ち着かなくてねぇ。・・・でも考えてみたらこの記事、一般人がググりそうなキーワード入ってないよな。

お勉強のつもりで読んだけど、いやなかなか面白かったよ。青本ばっか読んでるとなんだか飽きてくるじゃないですか。といって他の本をじっくり読むほどの余裕はない。判例って、ちょっとドラマ仕立てな感じが飽きなくっていい、ってゆーか。ってわけで、続編(弁理士試験代々木塾式・判例セレクト知的財産法〈2〉 )が出ていたのでそれも注文してしまった。アマゾンってホント便利なー。

この本(1の方ね)の出版は2003年。ヤフオクで古書店から手に入れた。ここ数年の怒涛の改正で、古本はもう役に立たないのかな、って思ってたけど、いやいや。改正に関係ない部分での論点の理解・整理には十分使えますね。さっきも書いたが、ドラマみたいなもんで、論点が印象に残りやすいしね。んで、それもこれも、超コンパクトにホントのエッセンスだけを抽出して抜粋してあるワザがあればこそ。判例そのものをイチから読んでたら逆に頭ぐちゃぐちゃになっちゃうよーな気がする。

ってわけで、なかなかええ本です。2005年の”2”以降、出てないのは残念だなー。

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2010年5月23日 (日)

【書評】マネーの進化史 著者:ニーアル・ファーガソン

マネーの進化史読了◎。原題は”THE ASCENT OF MONEY”。このタイトルは科学評論家ブロノフスキーの”The Ascent of Man”(人類の進化)のもじり。サブタイトルは”A FINANCIAL HISTORY OF THE WORLD”。著者はハーヴァード大学の歴史学教授。

マネー=お金、なんだけど、ここで扱っている題材はもっと広く、これ、金融システムの進化史ですね。それも、基本の基本から始める。つまり、古代メソポタミアで誕生した金貸しからスタートするわけですから。

中身はこんな感じ。例によって・・・以下はワシのメモ書き。

はじめに・・・マネーの本質とは何か?
第1章 一攫千金の夢・・・信用制度。銀行の誕生。いまのマネーは、銀行によって作られた、ある種の負債。
第2章 人間と債券(ボンド)の絆・・・債券市場。全ての市場の基礎。ロスチャイルド一族。アルゼンチンの経済史。
第3章 バブルと戯れて・・・株式市場。会社組織の誕生。ジョン・ロー。エンロン。
第4章 リスクの逆襲(リターン)・・・保険。スコティッシュ・ウィドウ。福祉。ヘッジ取引。
第5章 家ほど安全なものはない(as safe as houses)・・・不動産。住宅所有民主主義。
第6章 帝国からチャイメリカへ・・・金融市場。前回のグローバリゼーション(1914)。ジョージ・ソロス。LTCM。チャイメリカ(中国からの輸入品がアメリカのインフレを抑える、中国の貯蓄がアメリカの金利を抑える、中国の安い労働力がアメリカの賃金を抑える、だから、企業は儲かり、住宅ローン市場はだぶついた)。アメリカと中国の政治的な関係の悪化に注目すべし。
終章 マネーの系譜と退歩・・・リスクと不確実性。行動経済学的視点。産業資本主義は進化のプロセスというアナロジー。この20年=カンブリア大爆発。金融という種の起源。人間を映す鏡。

経済学がらみの本とは思えない、無味乾燥な教科書的な記述とは最も遠い、登場人物が生きて動いているかのような記述。興味深いエピソードてんこもり。著者はスコットランド人ですが、欧米の(特にイギリスの)サイエンス読本の系譜にも連なる本なんだなあ、と思いました。基本からきちんと説明する。手は抜かない。生き生きとした具体的なエピソードで語る。現在との関連性を意識する。

そして立ってるスタンスがね。各章のタイトルを見てもわかるとおり、基本から網羅的に説明しているけど、ただの通史じゃないんだよね。静的(スタティック)な歴史の記述でなく、動的(ダイナミック)な変化の模様を描き出すってゆーか。金融システムを進化論的に見てるってゆーか。視点が新鮮なんだな。

個人的には第一次グローバリズムの進展とその破綻(つまり第一次世界大戦)と、チャイメリカの今後、って視点がゾッとするほど面白かったな。果たして、人は歴史から学ぶことが出来るのか?ねえ?

それから、行動経済学。やっぱりちゃんと勉強してみようかな、って気になりました。そう、金融市場が人間を映す鏡であるならば。

読み応えのある、ええ本です。一読をお奨めします。

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2010年3月12日 (金)

【書評】東大の教室で『赤毛のアン』を読む 著者:山本史郎

東大の教室で『赤毛のアン』を読む読了○。副題は「英文学を遊ぶ9章」。東大の英文学の教授による、”イギリス児童文学入門”であり、”19世紀イギリス小説作品読解入門”であり、更には”論理的な思考による立論のやり方入門”。

取り上げられている作品とテーマは以下のとおり。
1 場面のポイントを読み取る-駅長は何故孤児を隠していないのか?・・・赤毛のアン
2 伝統を読み解く-主人公はなぜ「押し入り」なのか?・・・ホビットの冒険
3 英語で遊ぶトールキン-ユーモアはファンタジーを破壊するか?・・・ホビットの冒険
4 『赤毛のアン』の謎-村岡花子はなぜ「マリラの告白」を訳さなかったのか?・・・赤毛のアン
5 『アン・オヴ・グリーンゲイブルズの謎』-モンゴメリーはなぜ「マリラの告白」をカットしなかったのか?・・・赤毛のアン
6 語り手の謎-語っているのはどんな人?・・・高慢と偏見
7 さまざまな視点-笑うべきか泣くべきか、それが問題だ!・・・大いなる遺産
8 名作と映画-映画はどこまで原作を裏切るか?・・・ジェイン・エア
9 プロットを評価する-『ジェイン・エア』はオカルト小説か?・・・ジェイン・エア

各章は、テーマの背景ついての説明と、例として取り上げられた作品の英文とその翻訳、それからゼミでの学生とのやりとりを模した解説、の3つで立体的に構成されていて、判りやすく読みやすい。著者の仕掛けに乗って、謎解きを楽しむような感覚で読み進むことが出来ます。引用されている英文もごく短いもので、単語の註もついており、特に英語力がなくても、読むのに困難を覚えるということはないでしょう。

”小説には書き手である作者の意図が反映されている”、という前提から出発して読むことで、見えてくるものがある。それこそたった一つの単語の選ばれ方からでも、作者の言いたかったこと言えなかったこと、等々が浮かび上がってくる。手掛かりを探し、証拠を集め、論理的に追究していく。推理小説のようにね。この本の面白さは、そこにあります。一読をお奨めします。

19世紀のイギリス小説か。ディケンズとかブロンテ姉妹とかですな。オレ意外とそのあたり読んでないなぁ。そういえば文学刑事サーズデイ・ネクストでも舞台はジェイン・エアだった。”みんな読んでて知ってる”って前提があるからああいうパロディが成立するわけで。あれモトを知ってた方が面白かったんだろね。

さあこれでまた読みたい本のリストが長くなったぞ。どうしたってこれは時間が足りないよな。アーリーリタイアして読書三昧、してみたいなあ。・・・しかし人はそれをリストラ或いは引きこもりと呼ぶかも。はっは。

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2010年3月 7日 (日)

【書評】心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈下〉 著者:スティーブン・ピンカー

心の仕組み〈下〉読了◎。 副題は「人間関係にどう関わるか」。おなじみ、進化心理学者スティーブン・ピンカーによる、我々の持つ”心”という”器官”の仕組みについての出色の解説書にして仕様書にして取扱説明書、その下巻。(上巻の書評はこちら。中巻の書評はこちら。)

下巻の目次はこんな感じ。
第7章 家族の価値-人間関係の生得的動機
第8章 人生の意味-非適応的な副産物

上巻で、議論の枠組みを定め、”心の仕組み”について述べる。で、中巻から副題である”人間関係にどう関わるか”について本格的に論じ始めたわけですな。第5章の”推論”、第6章の”情動”と、”人間関係”についての基礎を固める。んで、下巻に入り、第7章が言わば具体論として”家族”、第8章が”人生”と。そうか。そこまで行くか。読んでて目眩がしました。巻を追うごとに、深い、面白い、のっぴきならない、領域を取り上げていく感じ。特に8章の終盤、哲学的な難問についての記述、はワシの中でまだ未消化だな。このブログを書きながら整理してきたいところ。

ってわけで、このブログの”続きを読む”のトコにせっせとメモをまとめながら、議論を整理し、じっくり考えた。5時間くらい掛かっちゃったよ。うん。言ってることはわかった。なるほどね。

心は進化的適応の結果として人間に備わった器官のシステムである。だから、人間が心で考える思考は、人間の認知的能力の働きについて閉じている。そして哲学的な5つの命題は、人間の脳に、その問題の本質を認知する認知装置が欠けているので、解けない。逆に言えば、これらの問題を解くことが出来ないという事実が、”心は進化的適応の結果として人間に備わった器官のシステムである”、ということを間接的に証明しているのかもしれない、と。

メモ書き、途中で息切れして7章の途中は手抜きしてしまいました。今度暇を見てやりますんで、カンベン。(って誰に言い訳してるんだか?)

上巻、中巻、下巻、どれも面白いのですが、やっぱり圧巻は下巻です。一読をお奨めします。

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2010年2月 6日 (土)

【書評】心の仕組み~人間関係にどう関わるか〈中〉 著者:スティーブン・ピンカー

心の仕組み〈中〉読了◎。副題は「人間関係にどう関わるか」。おなじみ、進化心理学者スティーブン・ピンカーによる、我々の持つ”心”という”器官”の仕組みについての出色の解説書にして仕様書にして取扱説明書、その中巻。(上巻の書評はこちら。下巻の書評はこちら。)

中巻の内容はこんな感じ。
第4章 心の目-網膜映像を心的記述に転じる-
第5章 推論-人は世界をどのように理解するか-
第6章 情動-遺伝子の複製を増やすために-

ピンカーは”心”という”器官”の仕組みを、基本的にいくつかの演算器官が競合しつつ共同で働いている系として捉えている。そしてそれぞれの演算器官の機能を調べる手段として、リバースエンジニアリングの考え方を用いる。即ち、ここにあるこれは、自然淘汰の圧力の下でどのような利益を個体にもたらしてきたのかを問う。

上巻では、この考え方を使って”心”を研究することの意味とメリットを述べ、予想される反論を予め潰しておいた。その上で、”心”の機能のうち”知能”に目を向け、それが何なのか、何故我々は知能を持つのか(何に適応した結果なのか)、を調べていった。

中巻では、同様に”心”のまた別の機能、”認識”と”推論”と”情動”について調べていく。(第4章を”認識”と要約するのはちょっと乱暴かもしんないけど、いい、許す。)

全体の見取り図としてはこんなトコ。これを意識して読まないと道に迷うことがある。ピンカーは根が学者なんで、ってゆーか、学者なんで、要約した結論だけを示すのをよしとしない。その結論に至った思考過程を丁寧に展開して書く。面白いし説得力が増すのは間違いないが、テーマによっては細部が”濃すぎて”、全体の見取り図が頭に入ってないと、何の話をしているのか分からなくなったりする。

個人的には、”認識”と”推論”はわりと慣れた論の展開で、興味深いが、あまり新鮮さが感じられないな、と思いつつ読んでました。副題である「人間関係にどう関わるか」ってテーマからも遠い、って思っちゃうしね。(あくまで個人的には、ですよ。内容は面白いですよ。そこんトコ誤解しないでね。)

んで、これも個人的には”情動”がめっちゃ面白かった。なんでか、ってーと、ちょっとアスペル君なワタシにとって、わお!新鮮なんですな。この話題は。「人間関係にどう関わるか」ってテーマにも乗ってるし。情動とは何か?何のために情動はあるのか?非合理的な情動、それを抑圧する理性というロマン主義的な考えは正しいのか?・・・なんだかわくわくしますね。(え?オレだけ?)

ってわけで、自分が感情的で社会との折り合いが悪いな、と思っているそこのアナタ。或いは自分が人の気持ちがわかんなくて社会との折り合いが悪いな、と思っているそこのアナタも。中巻の第6章だけでも、一読をお奨めします。イイよぉ。

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2010年1月29日 (金)

【書評】大腸菌 ~進化のカギを握るミクロな生命体 著者:カール・ジンマー

大腸菌 ~進化のカギを握るミクロな生命体読了◎。原題は”MICROCOSM E.Coli and the New Science of Life”。直訳すると”小宇宙 E.コリと新しい生命科学”。E.コリ、とは、エシュリキア・コリ、即ち大腸菌のこと。地球上のあらゆる種の中でおそらくはもっとも徹底的に研究されている生物、E.コリ。本書は現代分子生物学の重要なパートナーであるE.コリを通して、現代分子生物学の歴史を辿り、生命の謎に迫る。ばかりでなく、進化について、生命の起源について、また、遺伝子操作の問題点と意味について、広汎に考察する、極めて上質な科学読本。

面白い面白い。E.コリも我々人間と同じようにセックスもするし病気にもなる。仲間とコミュニケーションをとりながら共同生活をする。等々のE.コリの生態に関する意外な事実。へえー、って感じで、好奇心に駆られてどんどん読み進まずにはいられない。

また、最近ピンカーの影響で”進化論”がマイブームなワタシですが、これは別の側面から”進化”について色々と教えてくれる本でもありました。E.コリは物凄いスピードで世代交代をするので、ダーウィンが夢に見ながら諦めた、”進化の様子を実際にこの目で見る”ことを可能にしてくれる。この本で紹介されている様々な実験とその結果を読んでいると、抽象的な観念であった”進化論”が、具体的な”事実”として迫ってくるような感覚を覚えますな。

「E.コリにあてはまることは、ゾウにもあてはまる!」。ノーベル賞受賞者ジャック・モノーの名セリフ、本書の中に何度も少しづつ形を変えながら、繰り返し繰り返し出てくる言葉です。その精緻なしくみと、それが生命一般の原則として通用することに驚嘆しますね。そしてそれが変異と自然淘汰によって組み立てられた、ということにも。それ以外にもオモロイ話題がてんこ盛り。水平遺伝子移動の話題とかね。

ええ本です。こういう、科学の最前線を、端折らず、分かり易く一般人向けに書く、って事に関しては、英米に一日の長があるよなあ。一読をお奨めします。

内容のメモ書き。ってゆーか目次。
1.生命の軌跡
2.E.コリにあてはまることは、ゾウにもあてはまる
3.細菌単体としてのシステム
4.自然界での社会生活
5.絶え間なく流れる生命の川
6.存続を賭けての戦略
7.進化のスピード
8.オープンソースの遺伝子マーケット
9.生命の起源にさかのぼる
10.生命を人工設計する
11.さて、地球外の生命は?

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