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2012年8月 5日 (日)

特許権の消尽と改善多項制(つづき)

しっかし、ネットって、すごいね。ブログでこんなに濃ゆいレクチャーを受けられ、議論ができるなんて。いやそれもこれも一受験生の素朴な疑問にいちいちちゃんと応答してくれる奇特な方がいらっしゃるからで。もういくら感謝してもしきれないくらい。skiplawさま、中堅実務者さま、一企業内弁理士さま、あのーさま、その他見ていただいている方々、ホントにありがとうございます。(コメントの最初っからへのリンクはこちら

以下コメントからコピペ。

1.「**を特徴とする糸」の発明と「**を特徴とする糸を使用した織物」の発明との関係について
ワタシとしては、これら2つは同一発明である、という立場を採ります。根拠は39条の審査基準です。発明特定事項は「**を特徴とする」であって、糸と織物という、実施の態様が異なるだけで、技術的思想は同一といえるからです。糸と織物だから別発明である、とはいえないということです(2条1項)。
以下審査基準を引用します。
第 39 条により発明が同一か否かの判断の対象となる発明は「請求項に係る発明」である。第 2 条によれば、発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものとされているから、発 明が同一であるか否かの判断は技術的思想の同一性を判断することにより行う。たとえ実施の態様が一部重複しうるとしても、技術的思想が異なれば同一の発明とはしない。

一方、中堅実務者様は新規な化合物Aの例を例示され、実務上は特許庁はそのような判断はしないようだ、と仰っているようです。この点については、引かれている例は事案が異なっていて、用途発明として特許されたのだと解釈し得る、と思いますが、如何でしょうか。

そう考えると、中堅実務者様の
>なお、個人的には、そもそも、「**を特徴とする糸」と、「**を特徴とする糸を使った織物」とは、織物等に用いる「**を特徴とする糸」について、先行技術に存在していた何らかの課題を解決し特許性が認められた、実質的に同一の発明について、保護を求める範囲の表現を変えたもの同士なのではないか、と思っています。
>この考え方に立つと、両者を別々の出願でクレームしても、相互に実質的に同一の発明なので、39条1項又は2項により拒絶・無効になるということになると思いますが、
という部分とも平仄が合います。

2.権利の消尽について
特許権ごとに消尽するか、請求項ごとに消尽するか、学説が定まっていない、とのこと、ご教授ありがとうございます。それを伺って、ある種ホッと致しました。まったくの見当違いでもなかったんだなあ、と。

また、そうであるなら、ワタシとしましては、185条の規定振りから言えば、権利侵害に関しては、特許権は「一体不可分」だから、特許権全体として「消尽する」、という立場を採りたいと思います。またそのように解釈しないと、36条5項後段との関係から、同一の発明が消尽せず結果として二重利得を生ずる事態が起こりうるので不合理であるから、と付記しても良いかも知れません。

以上、ながながと書いてしまいました。ワタシの解釈の誤り、記載不備、ご質問、等ありましたら是非ご指摘よろしくお願いいたします。特に1.については、特許庁がそのような判断をしないとする他の根拠が提示されればあっけなく崩れる論証です。ご指導よろしくお願いいたします。

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720 弁理士試験」カテゴリの記事

コメント

toopoさま
(コメントが長くなってしまいましたので、こちらにコメントします。)

まず、私の表現が誤解を与える表現になっていたことをお詫びします。通説と申し上げたのは、消尽するか否かは、特許権者が二重に利益を得るか否か(以下、二重利得論といいます)で判断するのが、通説だという意味です。そして、これは最高裁判決で確立された判例ですので、今後、大法廷でこの解釈が覆されない限り、この二重利得論が消尽論の根拠の一つとされます。

この最高裁判決は、ご承知のようにBBS事件です。しかし、本判決の中で国内消尽にかかる二重利得論については傍論で示されたものでした(BBS事件の本論は、並行輸入による国際消尽の問題です)。その後、著作権に係る中古ソフト販売事件最高裁判決(H14年)やインクタンク事件最高裁判決(H19年)によって、正面から認められて、判例としての先例的価値を得ることとなりました。
こうしてみると、二重利得論が根拠とされたのは比較的新しいことがお分かりになられるかと思います。一度、判例百選(受験生は、ここまでは必要ないと言われる方もいらっしゃいますが)や最近の論文等を読まれることをお勧めします。


それで、一連のコメントをみてすごく気になった部分がありますので、その点だけコメントしておきます。それは、「特許権」について誤解されている部分があるのでは?ということです。
もし、私の感じ方・理解が間違っているようであれば、申し訳ありません。

さて「特許権」の効力とは何でしょうか?それは、68条に規定されているように、「業として特許発明の実施をする権利を専有すること」ですよね。「特許発明」の実施です。では、「特許発明」とは何でしょう。第2条第2項で規定されているように、「特許を受けている発明」です。「特許を受けている発明」とは?それは、特許査定がなされた各請求項に記載された個々の発明のことですね。
つまり、「特許権」とは、各請求項に記載された個々の特許発明を独占的に実施できる権利、即ち、各請求項毎に個別に発生する権利です。これら特許発明が、同一出願で成立してようが別出願で成立してようが、その特許発明に係る「特許権」は何ら変わるものではありません。

原則として、特許法は、権利が成立するまでは特許出願毎に判断しますが(請求項1は特許査定、請求項2は拒絶査定のように、部分確定というのはありません。一つでも拒絶査定となった請求項があれば、出願全体が拒絶査定となります。)、権利成立後は、各請求項毎に特許権が発生・存在する構造になっています。

実際、侵害訴訟における訴状では請求項まで特定します。そうでなければ、イ号製品がどの特許発明の技術的範囲に属するかを判断することができません。例えば、「特許第1234567号の特許請求の範囲に記載された請求項3にかかる発明」まで特定して、初めて構成要件を対比することができ、技術的範囲の属否が判断できるわけです。

「185条に記載されていないから、特許権全体・・・」や「各請求項を分けて別出願とした場合は・・・」との一連のコメントから、「特許権は各請求項毎に個別に発生する権利」という特許権の基本的な解釈を誤解されているように感じました。無効審判が請求項毎に請求できて、その権利の存否を争うことができることや、訂正審判、訂正請求も請求項毎にできる(これは、H23法改正が絡みますのでご留意下さい。)ことの意味も併せて検討されてみるのもいいかもしれません。

ちなみに、「185条に記載されていない」から「請求項毎に特許がされていない」というのは、185条の裏命題となりますので必ずしも真とは限りません(もちろん、正しい場合もありますが、断定できないということです)。そして、185条に記載が無いということ自体は、裏命題の要件ですから、その命題が真であることを示す理由付けにはなりません。この場合は、他の条文との関係や趣旨等を考慮して、適切な解釈をする必要があります。

似た例で、14条があります。14条には「出願の変更」は記載がありますが、「出願の分割」は記載がありません。では、出願の分割は共同出願人のうちの一人が単独でできるのでしょうか?できませんよね。この場合は、44条の主体的要件や38条の趣旨から導き出されます。

失礼ながら、一連のコメントを見て、特許出願、特許発明、特許権、特許等、これらが混同して述べられている部分があるように感じました。
特許権が各請求項に記載された特許発明毎に生じる権利であって、それらが一出願であろうが別出願であろうが特許権の効力には何ら関係ないことが理解できれば、skiplawさんの仰られることも理解が深まると思います。消尽理論は「特許権」の消尽を述べるものですから。そして、skiplawさんが述べられたように、このことと特許要件の話はまた別の問題です。

長文・駄文につき、失礼致しました。toopoさんの早期合格を応援しております。

投稿: 一企業内弁理士 | 2012年8月 8日 (水) 13時47分

toppoさま

すいません、先のコメントでお名前を間違えておりました。大変失礼いたしました。お詫びいたします。

投稿: 一企業内弁理士 | 2012年8月 9日 (木) 00時49分

 
横レスで失礼いたします。

一企業内弁理士 さんの2012年8月8日(水)13時47分のコメントを興味深く拝見いたしました。

「特許権」とは、「各請求項毎に個別に発生する権利」である、とのことですが、その根拠が今ひとつよく分かりませんでした。

確かに、68条には、「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」と規定されていますが、特許権が請求項ごとに発生するものであるとは、直ちに解せないように思います。

「185条に記載されていない」から「請求項ごとに特許がされていない」というのは、185条の裏命題となるので、必ずしも真とは限らない、とのことですが、185条は、その見出しが「二以上の請求項に係る特許又は特許権についての特則」とされていることから明らかなように、原則に対する例外を「特則」として規定したものであり、それでは「原則」とは何かというと、二以上の請求項があっても、一体不可分として、特許がされ、特許権がある、ということではないでしょうか。

請求項ごとに特許がされ特許権があるのが「原則」であるなら、185条のような、適用条文を限定列挙した「特則」は不要で、単純に、「二以上の請求項に係る特許又は特許権については、請求項ごとに特許がされ、又は特許権があるものとみなす。」とだけ規定すれば良いのでは?

また、最一小判平20・7・10(平19(行ヒ)318)民集62巻7号1905頁〔発光ダイオードモジュールおよび発光ダイオード光源〕では、傍論とはいえ、次のように判示されています。

「特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。」

投稿: 中堅実務者 | 2012年8月 9日 (木) 02時34分

中堅実務者様

コメントを拝見いたしました。ご指摘有難うございます。

私が申し上げたかったのは、権利の効力の問題のときに、「特許権」を「特許」と同じ意味で用いられている(ように感じた)ことに、おや?と思ったということです。

仰られるように権利の発生に関しては特許出願毎になされます。私もコメントの中で述べているようにこれは明らかです。ご提示戴いた最高裁判例のとおりです。(そういう意味では、先のコメントで「発生」と書いたのは誤解が生じたかもしれません。申し訳ありません。)

しかし、消尽の問題は特許権の効力の問題だと思います。特許権の効力は、先のコメントの通り請求項毎に効力を有するものだと考えます。

一連のコメントで、客体としての「特許」と権利の効力としての「特許権」を混同して議論がされている(と思われた)ことに違和感を感じたのです。なので、今一議論がかみ合わないのではないかなと思った次第です。

同一出願であろうが別出願であろうが、その特許発明が有する特許権(の効力)に差が有るはずはありません。そして、消尽理論は、まさしく特許権の効力が消尽するか否かの問題ですから、「特許」単位で議論するものではないように思うのです。

投稿: 一企業内弁理士 | 2012年8月 9日 (木) 09時46分

iPhoneからのため短文失礼します。
一企業内弁理士様。コメントありがとうございます。心から感謝します。
特許とは、正しくは、特許という行政処分を指す。という理解で合ってますでしょうか?

投稿: toppo | 2012年8月 9日 (木) 14時12分

toppoさま

そうですね。そのように理解しています。例えば、条文上でも、「特許を受ける権利」や「特許をすべき旨の査定」のように用いられますよね。

ただ、日常会話等で話したりするときは、特許権のことをいうときに、特許ということも普通にあると思います。

投稿: 一企業内弁理士 | 2012年8月 9日 (木) 15時03分

一企業内弁理士様。コメントありがとうございます。心から感謝いたします。

ご指摘を受けて、発端の論文(答えは、自分で、なんとか、しろ、と)を読み返してみました。「特許」と「特許権」の用語の使い分けができていないのでは、とのご指摘、ある意味そのとおりだと思いました。以後、特許とは、「特許査定という行政処分」、或いは「その行政処分の客体」、と肝に銘じて、曖昧にせず、エッジの効いた論文を心がけたいと思います。ご指摘ありがとうございました。

さて次の話題です。特許権は、特許(という行政処分)ごとに発生します(66条)が、特許権が、特許(という行政処分をされた客体)ごとに存在しているのか、請求項ごとに存在しているのか、意見が分かれている、のですよね?

ワタシ、最初一企業内弁理士様の言わんとすることがよく分からなかったのですが、読み返すうちに漸く、理解できました。なるほど!おもしろいおもしろい。これはアタマの中の理解のレベルが一段階上がった感じがします。

つまりこれは、特許権とは具体的に何なのか、というイメージの問題なのだと思います。さて、ここからしばらく、用語は法律を離れ、文学的になることをお許し下さい。(いやホントは法律用語で書かなきゃいけない、書きたいんですけど、そのチカラがワタシにはまだない、たぶん。)

確かにワタシは特許権の行使、という言葉を使うときに、抽象的な意味で使っていました。一企業内弁理士様がいいたいのは、その特許権の行使とは、抽象的なもんぢゃなく、具体的に「請求項1のこの物を実施(例えば生産)しとるやろ(だから差し止めるぞ)」と「言う」こと、だろ?ということですね?

そう理解すると、特許「権」が(つまり権利が)、具体的に「請求項」の「形をしている」のが、くっきり見えるような気がします。なるほど。特許権は確かに請求項の形をしている。逆に言えば、そのように具体的な形をしていないと、この権利は使いようがないのだな。

そこで翻って考えてみると、ワタシのイメージは、特許(査定という行政処分)によって、請求項の数だけの「権利の形」を持つ特許権が成立する、というもの。発明は技術的思想の創作ですから、その中心にあるのは、発明された物(ブツ)でなく、思想ですよね。それを権利行使の際、外縁がはっきりするようにブツやら方法やらに具体的に落としこんだもの、これが請求項というものであると。

だから、請求項ごとに特許権がある、ように見えるのですが、それらは根っこの部分の「思想」は同じなのです(単一性の要件)。と思っている。

ワタクシ思いますに、この部分を、あたかも各請求項ごとに特許権がある、というふうに思ってしまうと、BBS判決を読み誤る、のではないか、と。

適法に譲渡したってことは、その色々な形を取りうる思想を、ある具体的な形に落としこんで、その対価を得たわけでしょう。だからその時点でその思想の賞味期限は切れたんだよね。その上再度権利行使して二重利得を得ることは許されないよっと。BBS判決が言っているのは、ただそれだけのような気がするんですけど。

>消尽するか否かは、特許権者が二重に利益を得るか否か(以下、二重利得論といいます)で判断するのが、通説

なぜこの読み方になるのかが、どうも分からないのです。(因みに判例百選は所持しております、BBS判決は傍論部分は流してあって、あまり役には立ちません、Webの判決文コピペが一番と思いました。)

一企業内弁理士様。拙い説明、ガサツな表現で誠に申し訳ありません。しかし言いたいことは伝わりましたでしょうか?ワタシの抱いているイメージは根本的に間違っていますか???そうではない、と自分では思っているのですが・・・。

投稿: toppo | 2012年8月 9日 (木) 22時57分

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