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2011年7月17日 (日)

【書評】歌うクジラ 著者:村上 龍

歌うクジラ読了◯。舞台は近未来の日本。21世紀初頭、グレゴリオ聖歌を正確な音程で歌うクジラが発見された。そのクジラの細胞から採取された遺伝子(SW遺伝子)は、細胞の生命時計であるテロメアを修復し、人類に不死をもたらす。そして一世紀が経ち。最下層出身の青年タナカアキラは、流刑地「新出島」を抜け出し、「老人施設」を目指す。彼の身体にはSW遺伝子の秘密を記したICチップが埋め込まれている。社会を転覆させるほどの。最高権力者ヨシマツに会い、ICチップを渡せ。彼の父親はそう言い遺した・・・。

面白いか、ってゆーとまあ面白い。ヨメさんに貸したらあっという間に読んでしまってたんで、客観的に見て、読みにくいってこともないんだと思う。でもオレなんだかノれなかったんだよなあ。残念ながら。

一つにはお勉強に時間を掛けてるんで、いまいち集中して読書に没頭出来ない、ってのはある。普通の状態で読んだら◎だった可能性はじゅうぶんにあるよ。それは認めた上で、一応書いて置くな?

読後思ったんだよ、村上龍は年をとったんだなー。いやだれでも年はとるけど、このヒトの場合、体制側に取り込まれた感が漂っちゃう、そういう年の取り方。練れたというか、慣れたというか、熟(こなれ)たというか。お話としてのダイナミズムを捨てて、社会的なメッセージを取った、という弁護は可能かもしれないが・・・。いややっぱり納得がいかないな。

主人公に主体性がない。主人公の造型の問題ではなく物語の構造として、主人公に主体性がない。ネタバレになるので詳しくは書かないが、結局、タナカアキラくんの地獄巡りツアー、なわけですよ。もちろんただそれだけではなく、そう思わせておいて、ちゃんとそれをひっくり返す仕掛けもしてありますけど、しかしそのひっくり返しも含めて、お約束に見えてしまう。そのひっくり返しも含めて、主人公に主体性がない、ように見える。

日本のある側面をグロテスクにデフォルメして外挿された近未来。鍵は閉塞感であり、既得権であり、差別である。テクノロジ面でのガジェットはど~でもいい(いやお話的にはどうでもよくはないんだが)。そのある側面は正しくキッチリと反映されていると思う。そしてこれを描くのはそんなに簡単なことではない。その意味で、年を取って衰えた、ということでは全然ない。眼力も筆力も。読者としてのオレの不満は、この小説では今の閉塞感を打破出来ない、という点にある。そして打破出来ない閉塞感に捕らわれている今の状況を(打破しようとしても打破出来ない状況を)描いたのだ、と言われたら、そこで諦めるのは(もしかして諦めた自覚さえなく?)、「らしく」ないよね?ってことなんだよ。そのらしくなさが年を取っちゃったんだなあ感の中身だと。眼力筆力でなくスタンスの問題。

世界観に破綻はない。小説としてダメな訳ではない。でも好きになれない。そういう小説。それをあの、村上龍が書いたことが許せない、ってゆーか。いつからあなたはこういう目線で小説が書けるようになったんだ、ってゆーか。このヒトの本は殆ど全て読んでるが故に、余計にそう思うんだろな。

いかんタダの愚痴だ。書評ってヤツも書き続けてないとなんだかカンが鈍るんだなー。一旦出直します。

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コメント

今、読み終わって、面白かったんだけど、何かもやもやしてました。
村上龍、年取ったな…って思ったんですが、どう年取ったかわからず。
で、色々、皆さんのレビューとか読んでみてたんですけど、あなた様の感想、「そのある側面は... スタンスの問題」がとても的を射ていて少しもやもやが晴れました。ありがとうございました

投稿: みほ | 2013年12月29日 (日) 13時11分

みほ様。
コメントありがとうございます~。
ちゃんと読んでくれる人がいる、って思うと、書く意欲が湧いてきます。
そして同じ感想を抱く人がいるということを知るのは、とてもとても嬉しいものなのですね。

ここのところお勉強にかまけてずーっとサボっていたのですが、やっぱり、感じたことをシェアするということは、ワタシには必須のプロセスかもしれないな、と思いました。

そういう意味でも、どうもありがとう。
ではでは〜。

投稿: toppo | 2013年12月30日 (月) 19時48分

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