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2011年2月13日 (日)

【書評】ヘンテコピープルUSA 著者:ルイ・セロー

ヘンテコピープルUSA読了○。副題は「彼らが信じる奇妙な世界」。著者のルイ・セローはイギリス人で、英国BBC放送のTVドキュメンタリの、製作者にしてレポーターにしてジャーナリスト。アメリカのちょっとヘンな人たちをレポートした番組で人気を博した。宇宙人を殺したと主張する男、白人至上主義のコミュニティの主催者、アメリカのポルノ業界に憧れ就職した若者、カルト集団ヘブンズゲイトの生き残り、などなど。彼らは、いま、どうしているのか?10年に及ぶ番組制作の中で、特に印象深かった人々に、もう一度会いにいく、という企画を思いついた著者は、単身、アメリカに渡り、おんぼろ中古車を運転してアメリカ中を走り回る・・・。

登場するのは、こんな人たち。

宇宙人を殺した男、ソア・テンプラー
爛熟のポルノ業界の行き着く先は?JJ・マイケルズ
起死回生なるか?ティナ・ターナーの元夫の最晩年、アイク・ターナー
究極の愛国主義を目指して、マイク・ケイン
誠意と偽りの狭間で-売春施設の日常、ヘイリー
気のいい白人至上主義者、ジェリー・グルードル
それは虚勢か現実か-ハードコア・ラッパーのライフスタイル、メロウ・T
カルト集団ヘブンズゲイトの生き残り、オスコディ
億万長者になる方法、教えます、マーシャル・シルバー
母はナチスの信奉者-白人優位を歌う美少女デュオ、エイプリル、ラムとリンクス

このトンデモぶりを笑う、ってのが元々のTVドキュメンタリのコンセプトだったんだと思う。そこにはヨーロッパ人のアメリカ人に対する優越感、みたいな視線も感じられて興味深い。確かに、アメリカ人、ヘンテコぶりもダイナミックで馬鹿っぽくって、大味なんですわ。日本だとこうはいかないよね。もちろんヨーロッパでも。

明らかに反社会的な信条とかトンデモ思想を、俺がソレを信じているからという理由だけで堂々と主張してしまう、臆面のなさというか図太さというか無神経さというかノー天気さ。これ、アメリカって国、ならではの味なんだなあって思ったよ。原野が広がっていて、勝手にそこに来て暮らし始めたんだ、っていうイメージ。社会とか政府とかと個人との距離感ってものが、日本とかとは全然違うんだな、っていう。 国とか政府とかは関係ない。俺が暮らしてんだぜ、って感じ。

でもね、ヘンテコを通じて知るアメリカって感じで読み進むうちに、ちょーっと違うトーンに気付く。そう。この本、表紙とかの馬鹿っぽいつくりとは裏腹に、けっこう真面目で内省的な本だったんですよ。考えてみれば、TVドキュメンタリ自体はヘンテコぶりを笑うのが目的だったとしても、その人たちにわざわざもう一度会いに行くってのは、ただの野次馬には思いつかない企画だったってこと。

内省的な感じの真面目で気弱なイギリス人の若者が、アメリカのヘンテコな人々の懐に飛び込み、仲良くなって、こんなコト訊いたらやっぱマズイかな、と思いつつ、でも諦めずに正面からちゃんと訊いていく。はぐらかされたり嫌われたりすることもあるけどね。完成したレポートというよりは、取材に関する悩みや苛立ち、迷いが一杯の道中記って感じなんですわ。どーしてこの人たちが気になってしまったのか、自分で自分を不思議がりながら、モーテルを泊まり歩くハードな取材の旅は続く。思い通りには全然、ならない。

ってわけで、読後に残るのは、ちょっと切ない、感じです。ヘンテコな人々の、ヘンテコである部分以外の、人間性に気付くから?どうしても、分かり合えない部分に向き合うから?自分の中に彼らと同じモノを見るから?

見かけによらない本、でした。村上春樹さんが丁寧な解説を書いてるしね。 一読をお奨めします。

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コメント

はじめまして

以前を読みいただいた「職人暮らし」の著者です。
他のことで調べ物をしていましたら、偶然貴ブログを発見しました。

しかし、大した読書量ですね。わたしも一冊の本を上梓するには100~200冊くらいの関連書籍を読み込みますので、すぐに本が貯まってしまいます。すでに書庫は満杯、あちこちに分散留置wしていますが、家人から「床が抜ける、なんとかして」と矢の催促です。

蔵書の管理とかは、どのようにされているのでしょうね?

投稿: 原田多加司 | 2011年2月15日 (火) 17時23分

はじめまして。
「職人暮らし」の原田さんですか!コメントありがとうございます。光栄ですぅ。
私の読書量なんて、まだまだですわ。それもただ読み散らかしているばかりで。お恥ずかしい限りです。ここ暫くは弁理士試験勉強で読書量相当落ちてますしね。早く受かって1-2日で一冊のペースに戻したいトコです。
蔵書管理については私の場合、基本、図書館のお世話になります。借りて読んで、これは手許に置いておきたい、っていう本は改めてAmazonで購入するわけです。購入率は20%くらいでしょうか。それでも廊下にまで本棚がならび、地震があったらまず閉じ込められるだろ、って状態になってます(笑)。救いは、ヨメさんも本読みなんで、ソレほどは文句を言われない、ってことでしょうか。
それに最近、付箋を貼る読書が増えてまして、やっぱり図書館の本ではなんだかな、と思うことも多いです。難しいところですよねぇ。
ってわけで、あんまり参考にもなんなくって済みません。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: toppo | 2011年2月15日 (火) 22時12分

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