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2011年2月 6日 (日)

【書評】アナーキー・イン・ザ・JP 著者:中森明夫

アナーキー・イン・ザ・JP読了◯。俄かパンクの男子高校生シンジは、21歳で死んだアナーキスト、シド・ヴィシャスに会うために、イタコおばばを訪ねるが、降霊は失敗に終わる。翌朝、シンジの頭の中で声が聞こえる。アナーキスト違いで、大杉栄の霊が呼び出され、シンジの頭の中に住み着いてしまったのだ。繰り広げられる騒動。追体験される過去の大杉の体験。それを通して明らかにされる、日本の元祖アナーキスト、大杉栄とはいったいどんな人物だったのか。そして21世紀日本に大杉栄がよみがえった意味とは・・・?

ま、形式が小説なんで、カテゴリとしては小説に分類していますが、所謂小説ではないよね、これ。ストーリーや表現で読ませるものではない、という意味でね。ストーリーは御都合主義の極みだし、表現は 陳腐でどうしようもない。にも関わらず、この作品が成立するのは、なぜか?歴史上の人物でしかない大杉栄という人物を、生身の人物として、現代(いま)の人物として、蘇らせる試み、とでも申しましょうか。

難しい顔をした社会主義運動家、アナーキストでなく、情熱溢れる心優しきロマンチストで、女性が放って置けない人物として描く。歴史上の事件でしかない事件を、生(なま)の現場ルポのように描く。明治末期~大正時代の時代の雰囲気を、現在(いま)の時代の雰囲気と重ね合わせて描く。

これ、大杉栄の紹介本、賞賛本なんですよね。それから、閉塞感溢れる日本社会に対する警告書、告発書。アナーキスト大杉栄とは、何者であったのか。彼は何故、殺されなければならなかったのか。日本社会は何処へ向かうのか。そういった、事実の発掘、解釈、考察がこの作品の中心を成しているんですわ。だから小説というより実はレポート、読みやすくするために俗な趣向もいっぱい、みたいな感じ。そう思って読めば、後は素材の面白さなんで、それなりに面白く、興味深く読めます。

そもそも俺、アナーキストってのは、わかんないなー。無政府主義と訳されますが、そもそも主義の名に値するのか?何かを作ることでなく、何かから逃れることしか出来ない、というか。そんなもんは思想としては役には立たないじゃん、って思っちゃうんですよ。

一方で、大杉栄のような人物を生かしておくことの出来なかった時代と、現代(いま)の日本の閉塞的な時代が重なって見える、ってトコには、うんうん、と頷く感じがあり、その文脈の中では、内面的な抵抗としてのアナーキズムってのはアリか、とも思う。んで、でもそれ最初っから負けてませんか?っていうツッコミが入るよね。それと”時代が重なって見える”ってことに関しては、”その先”を考えずにはいられないよな。それ、「マネーの進化史」の第六章、チャイメリカの今後、ってコトですかい?果たして歴史に学ぶことは出来るのか?怖えよ。

っとまあ、色々と考えるきっかけにはなったんで、オマケして○。はい。

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