« 【書評】Q人生って? 著者:よしもとばなな | トップページ | 【書評】寝ても覚めても 著者:柴崎友香 »

2010年11月27日 (土)

【書評】政治をするサル―チンパンジーの権力と性 著者:フランス・ドゥ・ヴァール

政治をするサル読了◎。副題は「チンパンジーの権力と性」。原題は”Chimpanzee Politics : Power and Sex among Apes"。オランダのアーネムにある広大な野外飼育施設では、自然に近い状態でチンパンジーのコロニーを観察することが出来る。一頭一頭の個体を識別し、誰と誰がどのように関わったか、紛争の際にどちらの側に味方したか、つぶさに記録することで、チンパンジーの「社会」の構造が見えてくる。ただ単に強ければトップに立てるわけではない。社会的な序列があり、序列の確認のための儀式があり、地位を巡っての紛争があり、紛争の後の和解がある。その興味深い、あまりに人間臭い、習性の数々を紹介する・・・。

なにやら面白かったですぅ。基本的なスタンスとしては学術書というよりは一般向けの啓蒙本なんだと思うが、著者が不器用なのか、全体的に、観察した事件をただ並べてあるという地味な仕上がり。ところがこれが逆に幸いして、俗に流れず、ヘンに煽らず、しみじみ興味深い、面白い本になっています。一読をお奨めします。

何が面白いのか。まずはその興味深い生態。一頭一頭には、はっきりとした個性があり、それぞれの戦略、やり方、手管、で、コロニーに於ける自らの地位の向上を画策し、或いは維持し、或いはライバルの追い落としを図る。そこには、同盟があり、日和見があり、裏切りがある。虚勢があり、面子があり、贔屓がある。あるように見える。とても興味深い。

それから西欧人の類人猿観の変遷、みたいな観点から。冒頭のデズモンド・モリスの序文に出てくるセリフ、「私たち人間は、落ちた天使よりもむしろ向上した類人猿に近い」。ってそれ、あたりまえでしょーが!?っていうツッコミはワシらには出来るけど、西欧人は結構マジで言ってるんだよな。人間と動物は違う、っていう、そういう前提に立っているからな。その辺の葛藤というか、歴史的な変遷が面白いよね。この辺、SSSMとか、遺伝と環境とか、その辺の議論とも絡んできます。

んでもって、もっと個人的な観点からも、とても面白く、ためになる本でしたぜ。どういうことかというと、例えば会社とかでね、自分の体面を保つためにいろいろとパフォーマンスする感じとか、あるでしょ?自分自身もそうだし、同僚とか上司とか見ててもそうじゃん?この本読んでからそれ見るとね、「あー、これ、チンパンジーと同じ同じ」って思うんですよ。「そーか、DNAに書き込まれてるか。じゃ、しゃーねーな」みたいな。で、それはなんだかホッとするんだよ。

この本、「飢えたピラニアと泳いでみた」の中で名著として紹介されててね、読んでみたわけですが。確かに評判どおりの、ええ本でした。一読をお奨めします。ウッキー!

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ →ポチっとクリックしていただけると大変ありがたいです。
にほんブログ村

|

« 【書評】Q人生って? 著者:よしもとばなな | トップページ | 【書評】寝ても覚めても 著者:柴崎友香 »

150 ノンフィクション」カテゴリの記事

160 学術書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【書評】政治をするサル―チンパンジーの権力と性 著者:フランス・ドゥ・ヴァール:

« 【書評】Q人生って? 著者:よしもとばなな | トップページ | 【書評】寝ても覚めても 著者:柴崎友香 »