« 【書評】東京ファイティングキッズ 著者:内田樹、平川克美 | トップページ | 【書評】理屈が通らねえ 著者:岩井三四二 »

2010年5月23日 (日)

【書評】マネーの進化史 著者:ニーアル・ファーガソン

マネーの進化史読了◎。原題は”THE ASCENT OF MONEY”。このタイトルは科学評論家ブロノフスキーの”The Ascent of Man”(人類の進化)のもじり。サブタイトルは”A FINANCIAL HISTORY OF THE WORLD”。著者はハーヴァード大学の歴史学教授。

マネー=お金、なんだけど、ここで扱っている題材はもっと広く、これ、金融システムの進化史ですね。それも、基本の基本から始める。つまり、古代メソポタミアで誕生した金貸しからスタートするわけですから。

中身はこんな感じ。例によって・・・以下はワシのメモ書き。

はじめに・・・マネーの本質とは何か?
第1章 一攫千金の夢・・・信用制度。銀行の誕生。いまのマネーは、銀行によって作られた、ある種の負債。
第2章 人間と債券(ボンド)の絆・・・債券市場。全ての市場の基礎。ロスチャイルド一族。アルゼンチンの経済史。
第3章 バブルと戯れて・・・株式市場。会社組織の誕生。ジョン・ロー。エンロン。
第4章 リスクの逆襲(リターン)・・・保険。スコティッシュ・ウィドウ。福祉。ヘッジ取引。
第5章 家ほど安全なものはない(as safe as houses)・・・不動産。住宅所有民主主義。
第6章 帝国からチャイメリカへ・・・金融市場。前回のグローバリゼーション(1914)。ジョージ・ソロス。LTCM。チャイメリカ(中国からの輸入品がアメリカのインフレを抑える、中国の貯蓄がアメリカの金利を抑える、中国の安い労働力がアメリカの賃金を抑える、だから、企業は儲かり、住宅ローン市場はだぶついた)。アメリカと中国の政治的な関係の悪化に注目すべし。
終章 マネーの系譜と退歩・・・リスクと不確実性。行動経済学的視点。産業資本主義は進化のプロセスというアナロジー。この20年=カンブリア大爆発。金融という種の起源。人間を映す鏡。

経済学がらみの本とは思えない、無味乾燥な教科書的な記述とは最も遠い、登場人物が生きて動いているかのような記述。興味深いエピソードてんこもり。著者はスコットランド人ですが、欧米の(特にイギリスの)サイエンス読本の系譜にも連なる本なんだなあ、と思いました。基本からきちんと説明する。手は抜かない。生き生きとした具体的なエピソードで語る。現在との関連性を意識する。

そして立ってるスタンスがね。各章のタイトルを見てもわかるとおり、基本から網羅的に説明しているけど、ただの通史じゃないんだよね。静的(スタティック)な歴史の記述でなく、動的(ダイナミック)な変化の模様を描き出すってゆーか。金融システムを進化論的に見てるってゆーか。視点が新鮮なんだな。

個人的には第一次グローバリズムの進展とその破綻(つまり第一次世界大戦)と、チャイメリカの今後、って視点がゾッとするほど面白かったな。果たして、人は歴史から学ぶことが出来るのか?ねえ?

それから、行動経済学。やっぱりちゃんと勉強してみようかな、って気になりました。そう、金融市場が人間を映す鏡であるならば。

読み応えのある、ええ本です。一読をお奨めします。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ →ポチっとクリックしていただけると大変ありがたいです。
にほんブログ村

行動経済学、メモ書き。
1.利用可能なデータによるバイアス。本当に必要なデータでなく、簡単に思い出せるデータに頼る。
2.後知恵バイアス。
3.帰納の問題。情報が十分でないにも拘らず一般的法則を導く。
4.連続性の錯誤。90%の確率の7つの事象が全て起こる確率と、10%の確率の7つの事象の少なくとも一つが起こる確率。
5.確証バイアス。最初の仮説を覆す証拠よりも、それを裏付ける証拠にばかり目がいく。
6.混入効果。新たに得られた情報は、たとえ関連性がなくとも決定に影響する。
7.感情のヒューリスティクス。予め頭にある価値判断が、コストや効果の評価に影響する。
8.範囲の無視。規模の異なる被害を避けたい場合に、払うべき犠牲を規模に応じて調整できない。
9.キャリブレーションに対する過信。信頼区間を狭く取ってしまう。例えば、最良のシナリオと、最も確率の高いシナリオをないまぜにしてしまう。
10.傍観者の冷たさ。集団になると個人としての責任を放棄してしまう。

|

« 【書評】東京ファイティングキッズ 著者:内田樹、平川克美 | トップページ | 【書評】理屈が通らねえ 著者:岩井三四二 »

150 ノンフィクション」カテゴリの記事

510 経済」カテゴリの記事

160 学術書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【書評】マネーの進化史 著者:ニーアル・ファーガソン:

« 【書評】東京ファイティングキッズ 著者:内田樹、平川克美 | トップページ | 【書評】理屈が通らねえ 著者:岩井三四二 »