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2010年4月23日 (金)

【書評】消えた少年たち 著者:オースン・スコット・カード

消えた少年たち読了◎。フレッチャー家は、アメリカ南部のノースカロライナ州ストゥベンに越してきた。プログラマーのステップ、妻のデァンヌ。それから子供たち、スティーヴィー、ロビー、ベッツィー。やっと見つけたソフト会社の年収3万ドルのマニュアル書きの仕事。しかし上司はどうやら最低野郎だ。辞表を叩きつけてやめたいところだが、ステップは家族のために我慢する。ディアンヌは南部のこの土地に馴染めないが、モルモン教の境区(ワード)の仕事をこなすことで徐々に生活のペースを掴みつつある。そしてスティーヴィー。学校で何かあったのか?家では弟たちと遊ぶことをしなくなり、友達と一緒に遊んでいるのだと言うが、その友達は誰の目にも見えない。空想の友達?そんな年でもないのに。ステップとディアンヌは心配で堪らない・・・。

正直でまじめなオタクが、社会との折り合いをなんとかつけつつ、自分のファミリーを懸命に守っていこうとするその姿勢に、自分の姿を重ねてしまいまして な。すげえ入れ込んで読み耽ってしまった(笑)。んでもって、その夫婦間のやり取りだとか、子供たちとのやりとりだとかがなんとも言えずリアルでなあ。頭 の中で起きている、幾層にも重なった心の動き、例えば、正直であろうと努力する感じとか、正直であろうと努力する姿勢を自分で批判する感じとか、が、とて も身近に感じられてね、もう、主人公のオタク中年であるステップと一体化して居りました。そういう意味ではとても個人的な読書体験だったんだな、これ(笑)。

ま、それ以外の意味でも面白かった。いろんな意味でね。思わずウチのヨメさん(ミステリマニア)にも奨めてしまった。

まずはミステリとして。アメリカ南部の町ストゥベンの連続少年失踪事件の顛末。純正のミステリのマニアの方は、怒るかな?どうかな?ワシは、全然許しちゃうけどね。

んでもって、なつかしコンピュータの歴史。アタリ、コモドール、PET、などなど、なつかしのマシンが登場します。当時のPC業界の雰囲気がうまく書けていると思います。

それからモルモン教の現実を内側から描いた作品として。オースン・スコット・カードがモルモン教徒だってのは、わりと有名な話だよね?ワシは確かエンダーのゲームの解説で知ったんだっけか。作品の思想背景として宗教的なものを感じることはあったけど、この作品ではモルモン教の実際の活動の模様等々が描かれていてなにやら面白い。タテマエでなく、教団内部の人間関係とか信仰に対する立場の違いによるいがみあいとかが、ごくあたりまえのものとして出てきます。そこんトコが新鮮でな。

夫婦のあり方に関する小説として。ステップとディアンヌ、二人の夫婦の会話がとてもリアルで面白い。お互いを深く愛しているけれど、日々の暮らしの中で生じるちょっとした行き違い、子供の教育に対する考え方の差、等々が摩擦を生む、その感じ。そしてそれを認識した上で正面から乗り越えようとする姿勢。なんていうか、人間味あふれる小説なんですわ。ストーリーを進めるだけのキャラじゃなくって、どの会話をとっても、キャラが生きているっていうか。

ええ小説です。いろんな人にお奨めしたい本ですが、そうですね、特に、まじめに生きてるオタクなあなた、それからオタクな夫と結婚しているあなた、是非ご一読を。

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