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2010年3月29日 (月)

【書評】そして殺人者は野に放たれる 著者:日垣隆

そして殺人者は野に放たれる読了○。法曹人にとって不可解で異常な犯罪であればあるほど、刑が減免され或いは不起訴となる。刑法39条(1項、心神喪失者の行為は、罰しない。2項、心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。)によって著しく歪められた日本の刑事裁判の現状を暴く。

”正義”はどこに行ったのか。読めば読むほど、一種独特の絶望感が漂うなあ。刑法の根本には応報刑の考え方、犯罪抑止の機能なんかがあるはずだよね。司法関係者に、そのことに関する自覚がない。社会的に求められる機能を果たしていないんだよな。それどころか社会的な機能を果たすために、や らなければならない職務、事実を明らかにすること、それも果たしていない。精神鑑定の結果が全てか。どう なっているんだ。

結局、”正義”を行うことはどうでもいいと。そういうことなんですね?ただ前例に基づいて条文を解釈し事件に当てはめていくだけなんだよな。今や判決文も手書きじゃないだろうから、コピペで全部行けちゃうんだと思うんだよね。やんなっちゃうな。

裁判官の非常識ってだけの話じゃない。本書中に司法改革の挫折について書いてあるけど、つまり日弁連もある意味、共犯なんだね。穿った見方をすると、弁護士にとっ て、加害者は弁護を依頼してくる”客”だが、被害者(とその家族)は”客”じゃない。”客”のニーズに応える(即ち、刑の軽減或いは無罪を勝ち取る)ためには、手段を選ばな い。ってことですね。そのために役に立つ飛び道具39条は、温存しておくと。なくさせないと。

ああもう、いらいらするなあ。この理不尽な感じ、無力な感じ。読めば読むほど。でもね。これ、なんとかするには、ちゃんと読んで世論の圧力で刑法改正に持っていくしか、ないんだよね。綿密な取材、長期に亘り一つのテーマを追い掘り下げる努力、幅広い背景知識の使いこなし、考え抜かれた強靭な論理展開、ルポのお手本のような良書です。一読をお奨めします。

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