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2010年3月 2日 (火)

【書評】羆撃ち 著者:久保俊治

羆撃ち読了◎。著者は1947年生まれ。はやくから狩猟で生計を立てることを志し、20代で日本唯一の羆ハンターとなる。また、自らのハンターとしての力量を量るため、単身渡米しアメリカのハンター養成機関(アウトフィッターズ・アンド・ガイズ・スクール)の門を叩く。羆を追う緊張と興奮、研ぎ澄まされていく五感、愛犬であるアイヌ犬フチとの交流、山に対する畏敬の念。北海道の自然を背景に、シカ猟、羆猟の模様が生き生きと語られる。

静かでストイックだけれど、圧倒されるような迫力の本です。大自然の中で、人間がたったひとりで、羆という巨大な獣に立ち向かうことの大変さと”意義”を考えさせてくれます。また、後半、アイヌ犬フチとの交流は感動的で、人間と犬は種を超えて、こういう風にパートナーだったんだな、って気づかされます。

自然を相手に一人で山に居ると、内省的になるんでしょうねえ。マッチョな感じ、力を誇示する感じ、威勢のいい感じ、自慢する感じ、は皆無。自分の心の中を覗き込み、経験をひとつひとつ確かめながら、ゆっくりと、淡々と、綴ってゆくような、独特の文章です。自分の直感だけを信じて、損得を考えずに生きてきた男の凄みとでも申しましょうか。誰にも頼れない自然の中で、命を掛けて一人で羆に対峙してきた経験の重みとでも申しましょうか。我々が当然と思っている、時間の感覚、生業についての常識、人間や犬の能力、等々を根元から揺さぶるような、濃ゆい記述があっさりと、ただの事実として書かれているのを見て、あ、負けた、って思う。

ええ本です。一読をお奨めします。

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