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2010年3月 6日 (土)

【書評】殴る女 著者:荻野アンナ

殴る女読了○。主人公の”私”はアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、大学でフランス文学を教えている。日本生まれ日本育ち。フランスに留学。つまりは作者の分身。ストーカー対策でボクシングを始めた。彼氏を癌で亡くしたショックからたちなおり、海辺の地方都市”畑牛”に一人旅。”畑牛”には高名な撲神(ボクシン)阿弥陀如来の像がある。作法どおり「じゃぶじゃぶわんつうそわか」の真言を唱えてお札を供え、無心に拝むと・・・。

あはあは。いいよねえこのノリ。「じゃぶじゃぶわんつうそわか」ってアンタ。

ラウンド1-ファイティング畑牛 ・・・上記のあらすじ。以下、略。
ラウンド2-ノックダウン眠川 
ラウンド3-ボンジュール禍岡 
ラウンド4-レッドスモーキー腹黒山
ラウンド5-どすこい永田町
ラウンド6-アッパー居留守山
ラウンド7-コンクリート筒部
ラウンド8-ベイビー屁来

この作者の本を読むのは始めてです。読んで思った、好きか嫌いかで言うと特に好きではないな。でも、面白い。そうか、こういう小説もありか、って意味で新鮮で面白い。うーん。なんて言うんでしょうねえ。”日本”に対する考察、”日本人”のアイデンティティに関する省察、風刺、時事ネタ少々、現代日本を舞台とする若干のドタバタ、男と女。ちょっと怪しげな登場人物たちが次々と登場、関東一円とおぼしい地方都市を舞台に(どこがモデルだかうっすらと判る)、人を喰った文体でスルスルと話が進んで行く。

んでもって、主人公の”私”とは別に”作者”が作中に顔を出して説明を始めたり、”作者”の口述筆記担当労働者”山ちゃん”が出てきて”作者”に苦情を言ったり。そーゆーのがちょっとしたギミックとして効いていると思います。イヤミっぽくない。作者の”韜晦”だったり”言い訳”だったりしがちじゃないですか、そういうの。ところがこの使用例では、元々の作品がそもそも作者の分身を主人公にしているので、寧ろ”補完”とか”付加”とかに見えてしまう。結果的にどこまでが作者の分身でどこまでが作り話なのか余計に判らなくなる感じ。面白い面白い。

考えたいテーマがあって、考えるための手段として小説を書く、っていうのもありか。ありなんだなあ。なるほど。ってわけで、一読をお奨めします。

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