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2010年2月13日 (土)

【書評】四とそれ以上の国 著者:いしいしんじ

四とそれ以上の国読了○。四国を舞台とするいしいしんじの連作短編集。父が死に、俺とウキとミヨシと四女は高松の親戚にあずけられた。姉妹の中で最も体の大きいウキは浄瑠璃に取り付かれ「塩」、祖母の病気が峠を越したので、男は南に向かって峠を越えることにした。松山から高知へ特急いしづちと特急しまんとを乗り継ぎ「峠」。男はあしもとの道に導かれるまま巡礼宿を巡る。夜の港町は鯨の解体で祭りのようだ「道」。ピッチャーでトラック運転手の男は鳴門の渦を展望台から見下ろす。松山の正岡子規は大学野球の名キャッチャーだった「渦」。吉野川沿いの”寝床”で熟成された藍が逃げよった。頭(かしら)に命じられ五郎は藍を追う「藍」、中篇5編を収める。

四国は友達の結婚式で一度、関西に居る時に仕事で一度、行ったことがある。どっちも行ったのは”点”なんで、四国の”中”を旅したことはない。だから実感としてはワタシには分かんないんですが、独特の力をもった土地、なんだろうなあ、と。この本を読むとそんな感じがしてきますね。

もちろんこの本に出てくる四国は実在の四国ではなく、作者の中にある異世界”四国”なんですけど。宮沢賢治のイーハトーブのようなもの?実在の土地に重ねて作者が幻視した、架空の土地としての四国。それは歴史と(源平の合戦、戦国時代、太平洋戦争とその終戦、等々)と呪(まじな)いと子規と漱石とお遍路と鯨と、その他様々な土着に彩られた不思議な世界。時間も空間も輪郭がはっきりせず、人物も事件も独特の論理にのみ従う。

前にも書いたけどワシにとって、この人の文章はなんだか読み辛いんですわ。リズムが掴めないというか。でも、ちょっと中毒性な味があり、いつも苦労しながらも読んでしまう。この本はその傾向に磨きがかかってますな。この、”感じ”。ワシまだうまく表現出来ないな。書評を書く身としては、この”感じ”の正体をちゃんと言語化することが必要なのはわかってるんですが、たぶん、ワシには今はまだ無理。ごめん。

ってことで、理路整然と作られた”おはなし”には飽きちゃったって人、或いは、低周波のようにずーんとくる物語ってものを体験してみたい人、に、一読をお奨めします。

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