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2010年2月23日 (火)

【書評】アラビアの夜の種族 著者:古川日出男

アラビアの夜の種族読了○。原題は”The Arabian Nightbreeds”。聖遷(ヒジュラ)暦1213年1月(即ち西暦1798年7月)、欲深いフランク族(ヨーロッパ人)の邪視がカイロに向けられている。ナポレオン・ボナパルトという名の。当時のエジプトはマムルーク(奴隷)王朝以来の伝統により、マムルーク騎馬部隊の首長である23人の知事(ベイ)達が実権を握っていた。知事(ベイ)のうちのナンバー3の地位にあるイスマーイール・ベイは、武芸・謀略全てに於いて抜きん出た存在の筆頭執事(奴隷)アイユーブを従える。アイユーブは独自の情報網を使い、彼我の戦力の差を正確に認識している殆ど唯一の人物である。彼は対ナポレオン用の秘密兵器の開発を主人に約束する。ここカイロに古より伝わる、読むものを破滅させるという伝説の書物、”災厄の書”を仏語訳して、ナポレオンに献じるというのだ・・・。

そして。”災厄の書”は実は存在しない書物である。それは今から”夜の種族”(ナイトブリード)の女、ズールムッドによって物語られる物語。時に聖遷(ヒジュラ)暦1月16日、ナポレオンの艦隊はすぐそこまで迫っている。残された時間は少ない。ズールムッドが語り、アイユーブと書家(とヌビア人の奴隷)がそれを聞き、記録する。かくして第一夜が更けて行く・・・。

目次はこんな感じ。
聖遷(ヒジュラ)暦1213年、カイロ・・・導入部。上記の要約はこの部分。
・第一部 0℃・・・第一夜から第四夜、”もっとも忌まわしい妖術師アーダムと蛇のジンニーアの契りの物語”。
・第二部 50℃・・・第四夜から第十四夜、第一部から1000年の後、”美しい二人の拾い子ファラーとサフィアーンの物語”。
・第三部 99℃・・・第十五夜から第二十二夜、物語と書物についての物語。第一部と第二部の物語が共に結末を迎える。そして・・・。
仕事場にて(西暦2001年10月)

アラビアンナイトの伝統に則って、ズールムッドによって語られる第一部、第二部、第三部、の各夜の合間に、現在進行中のカイロでのナポレオンとの戦いの模様が挿入されていく。アイユーブは間に合うのか?アイユーブは何を考えているのか?この(現在進行中の)物語は何処へ行くのか?

物語についての物語。書物についての書物。循環する歴史の皮肉。現実と虚構の入れ替わり。真面目な顔してるんでちょっと見、分かりづらいけど、実は仕掛けとギミック満載の本です。私はみごとに騙されました。な、なんという・・・。

んで、第二部と第三部、ファラーとサフィアーンの物語の”戦いの描写”はラノベファンタジーのパロディだよな。結構読むの辛かったぞ。第一部と第二部もなにかのパロディになってんのかね?イスラム伝承説話のパロディっちゃそのとおりだが。ああもう。負けたよ。説明になってないな。でもね。

騙されたい人、騙されても平気な人、ラノベ読める人。一読をお奨めします。って感じ?

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