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2009年12月20日 (日)

【書評】言語を生みだす本能 著者:スティーブン・ピンカー

言語を生みだす本能(下)読了◎。上巻の感想はこちら。気鋭の進化心理学者であるスティーブン・ピンカーの書いた本。人間が如何に言語を獲得し運用しているかについて、最新の(つーてももう出版から10年くらい経っちゃいましたが)研究成果を紹介し、啓蒙する。言語について、進化について、本能についての、俗説、迷信、偏見を取り上げ、矛盾点を指摘し、おちょくり、ばっさり切って捨てる。当たるを幸いちぎっては投げちぎっては投げ、向かうところ敵なし、そのさまあたかも無人の荒野を行くが如し!強え。

下巻のメイントピックスはこんな感じ。
Ⅷ バベルの塔-言語の系図
Ⅸ しゃべりながら生まれた赤ちゃん、天国を語る-母語を習得するプロセス
Ⅹ 言語器官と文法遺伝子-脳の中にさぐる
ⅩⅠ ビッグバン-言語本能の進化
ⅩⅡ 言語指南役たち-規範的ルールの誤り
ⅩⅢ 心の構図

上巻の感想でも書きましたが、思考する言語とかなり内容的に被ります。どっちもホントの学術書というよりは大衆向けの啓蒙書だしね。比べると、「思考する言語」は読者を飽きさせないスパイスとしてギャグを多用していましたが、「言語を生み出す本能」のスパイスは講談?ってのは半分冗談ですが。でも俗説を名指しで論破していく身のこなしの鮮やかさは、啓蒙本としての効果を狙った意図的な演出でしょうな。かっこいい。

んで、個人的に面白かったのは”ⅩⅢ 心の構図”の章。他の章が”言語を生み出す本能”という考え方を支える証拠について語っているのに対し、この章は”言語を生み出す本能”という考え方の持つ意味について語っていますね。政治的な影響を含めた、社会科学の歴史を踏まえての。

この章で言及されているある種の”微妙な”感じ、革新と反動の、左派と右派の、自由と束縛の、対立。これがなんとも”なつかしい”ってゆーか。滑稽ってゆーか。でもいまだに自分の中でこの件に関して身構えてしまう感じは確かにあるんですよね。そこんトコが面白い。そして、そこんトコをきれいに整理して、誤解を解きつつ、立場を明確にしていく姿勢が素晴らしい。うん。ⅩⅢ章だけでも読む価値あるかも。

以下、メモ書き。
相対主義=社会科学標準モデル(SSSM)という幻想。対義語は生物学的決定論。
1.人間の行動は記号と価値で構成される自立システムである文化によって決定される。文化相互の差異は恣意的、かつ無限。
2.学習は知識のあらゆる領域に通用する汎用プロセスである。子供は教化、報酬と懲罰、およびロールモデルを通じて自らの文化を学習する。
人類学者マーガレット・ミード。心理学者ジョン・ワトソン(あの、タブラ・ラサ発言)。

遺伝と環境(氏と育ち、生得と後天獲得、生物学と文化)という二元論の本質的貧しさ。そこに”心”を持ち込め。
                        環境
                         ↓(インプットを提供)
遺伝-(形成する)→学習メカニズムを含む生得の心的メカニズム-(決定する)→行動
                        ↓↑(発達させる/アクセスする)
                        技能・知識・価値観

総合的惹起モデルは心理学と人類学を神経科学や進化論的生物学と一体化する。これが進化論的心理学と呼ばれる。

普遍文法の拡張、普遍人(ユニバーサルピープル)byブラウン。

類似性は外界にあるのではなく見る者の心のうちに存在する。刺激を主観的に幅を持たせて受け取る能力。

推定。人間の心にはどんなモジュールがあるか。
1.力学的直観
2.生物学的直観
3.数
4.広いテリトリーについての心的地図
5.住処の選択
6.危険
7.食べ物
8.汚染
9.満足のいく状態であるか否かの点検
10.心理学的直観
11.心的住所録
12.自像
13.正義
14.親族関係
15.配偶関係
このリストの、心理学の単元との不一致、神経科学の単元との一致。

二つの主張の混同。
「人間同士の差異は生得である」と「すべての人間に共通するものは生得である」。

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