« 【書評】マックピープル12月号  | トップページ | 【書評】血に問えば 著者:イアン・ランキン »

2009年11月 7日 (土)

【書評】アンドロイドの脳 人工知能ロボット”ルーシー”を誕生させるための簡単な20のステップ 著者:スティーヴ・グランド

アンドロイドの脳読了◎。副題は「人工知能ロボット”ルーシー”を誕生させるまでの簡単な20のステップ」。原題は「GROWING UP WITH LUCY   How to Build an Android in Twenty Easy Steps」。著者は1958年生まれのイギリス人。高卒で小学校教師となり、なったあとで自分に全く向いていないことを悟る。コンピュータと出会いプログラマーに転じ、創ったゲームが大ヒット、その功で管理職に昇進するも、管理職としては全く無能だったため会社をクビになる。ところが良くしたもので、数週間後、ゲーム業界の発展に寄与したとして大英帝国四等勲章を叙勲する。時に1999年12月31日昼。もうすぐ憧れだった未来、21世紀がやってくるというそのとき。これは何かの天啓だ。著者はプロジェクトをスタートさせることにする。自分だけで完全な人工生命を作るというプロジェクトを・・・。

仰天するほど面白い。泣くほど面白い。うん。一気読みしてしまいました。頭くらくらしてます。消化不良です。でもでも途中でやめることは出来なかったな。さて読み返そう。

出版社はアスペクトだし、表紙はちょっとキワモノっぽいし、軽いエッセイかなんかのつもりで読み始めたのですが。いや確かにそういう要素も入っていますが、本質はガチンコの、人工知能のつくりかた、についての本です。そしてそれは即ち、知性とは何か、脳はどのように働いているのか、についての本でもあるわけです。

経歴を見ても分かるとおり、全くの独学で人工知能(とゆーか人工生命とゆーかロボットとゆーかアンドロイドとゆーか)の研究をしているアマチュア科学者なんですよね。でも(だから、か)分析でなく統合を重視するこの姿勢は、今まで読んだ人工知能の本の中にはなかったもの。無茶苦茶新鮮です。直観的に、ああ、これが正しいアプローチだ、って思う。思わず応援したくなる。実際、助成金が今年の春で打ち切られ、貯金を食い潰しながら研究を続けている状況みたい。凄いな。面白いなあ。

機械が、或いはコンピュータが知性を持つお話、ってのは世の中にいっぱいある。でも、どれも、お話、でしかないのをみんな知っているよね。少なくともワタシは本当に有りうること、としてそれを読んだたことは今まで一度もなかったよ。

でも、この本を読むと、もしかしたら、この方法を洗練させていくと、そこに、我々の持つ”知性”ってものと区別のつかないものが現れるのでは、ってわくわくすることが出来る。これは生まれてはじめての経験です。

それからもうひとつ、そういう、”知性”を含む心、或いは意識ってものが、脳の機能、働き、状態、の別称なんだということ。これもこの本を読むと腑に落ちる。うーん。おみごと。それはぜんぜんイヤじゃない。寧ろホッとするんだな。

一読をお奨めします。

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  →ポチっとクリックしていただけると大変ありがたいです。
にほんブログ村

20のステップとは何か。メモ書き。(途中)
<第1部 構想>
第1章 わが中年の危機にようこそ
開発に至る経緯。ってこの記事の冒頭に書いたとおり。

第2章 架空の思考アルゴリズム
脳のように行動するプログラムだ。心のように行動するプログラムでなく。心の働きを機能単位に分割することの誤り。プロセス指向でなく目的指向プログラミング。脳の構造を模倣してそこに心が生まれるに任せる。コネクショニズム。

第3章 歯車からゴキブリへ
ニューロンは入力の積和を伝達する装置、なのか?順序論理と組み合わせ論理。ニューラルネットワークは自然選択を通してよりよい構造を手に入れる、のか?

第4章 ゴキブリから大脳皮質へ
ゴールではなく考えるための媒体としてのルーシー。ある場合には統合は分析よりも強力だ。1984年ヴァレンティノ・ブライテンベルク「模型は心を持ちうるか」哲学書房。モーガンの公準とオッカムの剃刀。汎用化されたモジュールの活用。PLD(プログラマブル・論理素子)。基本単位。ニューロン、PLD、PLD間接続、大脳皮質の基本単位(V1、M1、等)。大脳皮質の基本単位の構造に隠されている一つの賢い工学的技術を探す。

<第2部 体>
第5章 肉体を作る
知能は複雑さを必要とする。感覚器官と動力を出来るだけ模倣する。物理的な動きだけでなく神経系統への影響も模倣する。

第6章 PICを使う
能力は低いがひとつのチップに全てが載っているMCUチップ、PIC16F876を使う。柔軟性の高い、設計可能な基本単位として利用する。

第7章 同意見であるほど良い
目はビデオカメラを使う。その画像を、本物の動物の視神経から脳へ送られる信号に似せる。見つめるから見える、ということ。サッカード。視点を絞った注意は一度に扱わなければならない情報量を最小にするのに役立つ。

第8章 最高のカクテルパーティには最高のオリーブを
カクテルパーティ効果の一部は上オリーブ核で実行されている?連続したニューロンのどこにピークが来るか。仮想蝸牛。喋る事に関して言えば、脳が関わっているのは言語を発するための筋肉の動き。仮想声道。

<第3部 心>
見る、聞く、話す、動く、ことは同じ問題を別の角度から見ているに過ぎない。
第9章 脳に関する簡単なガイド
異なる部位は異なる作業をしている。脳の一部がある活動に関わっているからといって、その部位がプロセスを実行していると結論付けることは出来ない。神経活動はコンピュータの計算に似ているわけではない。大脳皮質を、細胞の種類の比率と配線パターンによって、いくつかの地図に分割する。各は第I層から第VI層までの層に分かれている。それぞれの皮質地図を独立した加工モジュールとして扱う。下位組織として、視床、大脳基底核、小丘、がある。全ての感覚と運動信号は視床を通る。大脳基底核は筋肉反応を引き起こし操作する。小丘は目と頭の動きの中心。
脳葉について。脳葉は脳の配線図の基本的細分。各葉は特徴的な幅広い機能を持つ。視覚に関係する後頭葉、認識し記憶する側頭葉、空間関係を扱う頭頂葉、意図的な筋肉の動きの制御の前頭葉前皮質、意思に関する抽象的で遅効性で戦略的なレベルを扱う前頭葉。これらの”設計の精神”、技術上の基本原則を掴むこと。

第10章 笑うブタのカーテン
知覚は必ず信号の遅れの影響下にある。脳は予測する機械であるという仮定。心の中で語る。その核心に知能がある。体を動かすプロセスもこころの中の語りの一部。内部の予想モデルを「想像力」と呼ぶことにする。”計画”も”知覚による仮定”も”意図”も同じプロセス、脳の中で扱われる領域によって呼び名が変わるだけ。

第11章 飛ぶことを学ぶ
第一次要求、望ましい下げ翼の角度。第二次要求、望ましい旋回角度。第三次要求、機体の傾斜角度。望ましい状態と現実の状態の比較。知能との類似性その1。サーボの階層性、センサーシステムの階層性。その2。可逆性。その3。独立しているサーボ系統が環境の中で緩やかに結びつく。これらから導かれる第四次要求、望ましい針路を決定する設備。出来るだけ高く飛びたいという”衝動”。各サーボは全体の活動の中で自分がどの役割を占めているのかを知る必要は無い。
紙の上のサーボの比喩。目標の状態と現実(感覚)の状態、この差を補正して生き物を快適帯に戻す。感覚的な表面は肉体の状態を表す。望みの表面は心の状態を表す。サーボ機構はこれを一致させようとする。ならばそれは。予期される未来の世界の状態を表す。これが人間が想像力を持つ理由?(だったら生き物は全て・・・?)

第12章 陰と陽
脳は製造マシン(ソーセージ・マシン・モデル)でない。二つの異なる信号の流れ、フィードバックとフィードフォワード。大脳皮質の6層を模式化、A(I、II)、B(III)、C(IV)、D(V、VI)。感覚データはCから入り、Bから出て次の大脳皮質地図へ向かう、CBCBCB。運動信号はDから出て、より生データに近い大脳皮質のAに入る。ADADADA。
三脚のような構造。三脚の上には大脳辺縁系?しかし中央制御装置は不在。並行する二本の系統に緩やかに纏められただけの複雑なネットワーク。<陰>と<陽>。<陰>は脳の感覚状態、<陽>は望みや期待や意図に相応する。紙の上のサーボとの類比。<陽>の信号が「想像力」の源。

第13章 幻視
この本の中でいう「想像」とは、脳が世界に関して心の中で短い時間の表現をする、全ての状況を含める。この広義の「想像」には注意、意図、期待が含まれる。何かを想像するときには実際に経験するときと全く同じ皮質が使われている。(岩波のイメージ脳を思い出しましました。)

第14章 君の瞳に乾杯


第15章 脳を育てる
第16章 傾く風車
第17章 夢の時間
第18章 融合-そしてある程度の混合
<第4部 精神>
第19章 悪い行い
第20章 デカルトと驚くべきゼリー状のエクトプラズム

|

« 【書評】マックピープル12月号  | トップページ | 【書評】血に問えば 著者:イアン・ランキン »

120 エッセイ」カテゴリの記事

150 ノンフィクション」カテゴリの記事

160 学術書」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【書評】アンドロイドの脳 人工知能ロボット”ルーシー”を誕生させるための簡単な20のステップ 著者:スティーヴ・グランド:

« 【書評】マックピープル12月号  | トップページ | 【書評】血に問えば 著者:イアン・ランキン »