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2009年9月30日 (水)

【書評】ソングライン 著者:ブルース・チャトウィン

ソングライン読了◎。オーストラリアの原住民アボリジニは様々な部族からなり、定住せず、オーストラリア大陸全土を放浪して生活してきた。それぞれの部族は一族の歴史、即ち、旅の記録=歩いた土地の記録を、歌という形で連綿と伝承し記憶している。広大なオーストラリア大陸は、この目に見えない道、ソングラインが無数に張り巡らされた巨大な迷路なのだ・・・。

それゆえに、歌は一族の儀式の要である。更に一種の通行許可証である。その土地の歌を知っていることが先祖とその土地との繋がりを保証する。そして一種の財産でもある。近隣部族と歌を交換し、貸し借りをすることも出来るのだ。

この本で初めてソングラインというものの存在を知りました。いや面白い面白い。土地の所有、っていう概念が根本的に変わってしまうような、斬新な切り口ですよねえ。定住者でなく放浪者の土地観というか。この、自分の常識がぐらっと揺れる感じは、なんだかわくわくする感じは、上質のSFを読んだときの感じと近いな。事実は小説より奇なり。わお。

著者のチャトウィンは、サザビーズの美術鑑定家として将来を嘱望されながら、心因性の目の病から会社を辞め、考古学を勉強しなおし、全世界を旅して廻ったジャーナリストであり作家。旅をすることで目の病は治ったそうですから、筋金入りの放浪家なんですね。当然というべきか、放浪、遊牧民(ノマド)理論が生涯を貫くテーマ。なぜ人は放浪するのか。なぜ所有を嫌うのか。なぜ故国を捨てるのか。或いはまた、人はなぜ都市をつくり定住するのか。なぜ戦争するのか。本書はその集大成です。この本を書き上げて2年後、旅の途中、中国で風土病で亡くなっています。

オーストラリアを旅するドキュメンタリタッチの部分と、ノマド理論に関連する古今の文献の抜粋、アフリカと中東を中心とする著者の過去の旅の記録の断片、等々が入り混じり、決して読みやすい本とは言えません。でも慣れてくると、このパッチワーク状の断片を拾い集めて理解をしていくという作業がなんだか楽しくなってくるから不思議。これが定住的でないノマド的理解の実践、っていうのはただのワタシのこじつけか。

因みにこの本を薦めてくれたのは私の知人ですが、つねづね放浪癖がある、と彼のヨメさんに非難されている人物。そりゃ、アンタには、間違いなくいい本だよな、って思いました(笑)。

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