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2009年8月23日 (日)

【書評】出星前夜 著者:飯嶋和一

出星前夜読了○。舞台は島原。寛永十四年陰暦五月から寛永十五年二月にかけての十ヶ月間。江戸初期の、松倉藩領民の武装蜂起、世に言う島原の乱を、背景・発端から個々の戦闘の経過に至るまで、丁寧に描き出す。

うーむ。この調べ上げ方は凄い。いやどこまでが史実でどこまでが作者の想像なのかは私には判断がつきませんが、細部の描き込みの鮮やかさには脱帽です。圧倒されました。

この著者の本は始めて読んだのですが、系譜としては司馬遼太郎系「史実の再評価」時代劇という感じですかね。でも、ちょーっと違うのは、司馬遼太郎が「日本人とは」という問題意識で物事を解釈していたのに比べると、選んでいる事件がもっとピンポイントで、描き方も突き放した感じがする、ってことでしょうか。

その意味でこの本は、時代劇とゆーか時代物とゆーか、このジャンルの新しい形なのかもねえ。実も蓋もない言い方をすれば、血も沸かない肉も踊らない、ただただ事実を検証し、戦いの虚しさ愚かしさを暴いていくという。ワタシなんかね、どっぷりハマるたちなんで、なんつーか、軽いウツになる感じというか。

エンタメ性が希薄であるということは、どうなんでしょう、やっぱマイナスなんですかねえ。勧善懲悪みたいなものを求めていたわけではもちろんないんですが・・・。もちろん、作者もそこんとこは考えていて、ちゃんと小説の中に「救い」はあるんですけど、それはそれでいいんですけど。ま、半分ワタシの個人的な愚痴だという自覚はある。

さて、いい小説ですが、読後感が良くない、ってのはありか?ありだな。うん。いい小説だから、読後感が良くないのかもしれないしな。とゆーわけで、いい小説です。読後感は良くありませんでした、ワタシには。ってことで。

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コメント

私の実家は福井県坂井市丸岡町にあり、有馬家の家臣でした。もともとは、南島原の土豪で、有馬家の進出とともに家臣団に組み込まれ、有馬家の延岡移封に従い、丸岡にも移ってきました。南島原の地に、実家の苗字と同じ地名を見つけ、かって、先祖がその地の名主であったという父の言葉を実感しました。一族の4家族が延岡に移ったそうで、島原に残った一族は、島原の乱で全滅したと聞いていました。その全滅の過程を、本書で知りました。実家の宗教は浄土真宗ですが、近くにある石灯籠に隠れキリシタンのクロスが刻まれています。

投稿: クロス | 2011年2月27日 (日) 06時05分

クロスさんはじめまして。
コメント有難うございます。
一族の全滅の過程、ですか・・・。一読者であるワタシですら軽いウツになる感じだったんで、身内だと尚のこと辛かったのではないかとお察し致します。労作だしいい小説だと思うのですが、読んで辛いってのはちょっとキツイですよねぇ・・・。
あ、クロスさんのクロスは十字架のクロス?今でもクリスチャンなんですか?歴史の重みってヤツですね。
今後とも宜しくお願い致します。

投稿: toppo | 2011年3月 3日 (木) 06時46分

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